核融合発電という言葉を聞いたことはありませんか?
太陽の内部で起こっているエネルギー源として、人類の夢とも言える発電方法です。
しかし、その実現にはまだ多くの課題があります。
本記事では、核融合発電のメリットと課題、そしてその研究開発や産業化に向けた動向と投資先について、わかりやすく解説します。
核融合発電とは何か
核融合発電とは、水素原子の核を高温高圧の状態で衝突させて融合させることでエネルギーを得る発電方法です。
この反応は、太陽の内部で起こっていることと同じです。
核融合発電には、以下のようなメリットがあります。
- 水素という豊富な燃料を使うことができます。水素は、海水から取り出すことができるので、資源の枯渇の心配がありません。
- 二酸化炭素や放射性廃棄物をほとんど出しません。核融合発電は、環境に優しいクリーンエネルギーと言えます。
- 安全性が高いです。核融合反応は、非常に高い温度と圧力が必要なので、自然発生することはありません。また、事故が起きたとしても、核分裂発電のように大規模な放射能汚染は起こりません。
核融合発電の課題と動向
核融合発電は、夢のような発電方法ですが、その実現にはまだ多くの課題があります。
その中でも、最大の課題は、核融合反応を安定的に起こすためには非常に高い温度(1億度以上)と圧力(数百万気圧)を必要とすることです。
そのためには、高性能なプラズマ制御技術や超伝導磁石などの先端技術が必要です。
また、実用化にはまだ長い時間と多額の費用がかかります。
しかし、世界では、核融合発電の実現に向けた研究開発や産業化に向けた動きが活発化しています。
以下に、その代表的な例を紹介します。
国際核融合実験炉(ITER)
国際核融合実験炉(ITER)は、フランスで建設中の核融合炉です。
日本を含む35カ国が参加している国際協力プロジェクトで、2025年に初のプラズマ点火を予定しています。
ITERは、核融合発電の実現に向けた最大の実験施設で、核融合反応によって発生するエネルギーが入力エネルギーを上回るという「点火条件」を達成することを目指しています。
日本の核融合発電戦略
日本では、政府が2023年2月に初めて核融合発電の実証に向けた戦略案を策定しました。
その中で、2030年代に国内で核融合発電の実証炉の建設を開始し、2050年代には商用炉の運転を目指すという目標が掲げられました。
また、2024年3月には、産官学連携の「核融合産業協議会」が発足しました。
この協議会は、核融合発電の実用化・産業化に向けて、技術開発や人材育成、国際協力などの取り組みを推進することを目的としています。
核融合スタートアップ
核融合発電の研究開発や産業化に向けた動きは、民間のスタートアップも含めて世界的に盛り上がっています。
日本では、京都大学発の核融合スタートアップ・京都フュージョニアリングが、国内の同分野の調達では最大となる105億円の資金調達を発表するなど、注目を集めています。
京都フュージョニアリングは、小型で安全な核融合炉の開発を目指しており、2030年代には実証炉の建設を計画しています。
核融合発電に関連する投資先
核融合発電は、未来のエネルギーとして大きな可能性を秘めています。
しかし、その実現にはまだ多くの時間と費用がかかります。
そのため、核融合発電に直接関わる企業の投資は、長期的な視点が必要です。
一方で、核融合発電に関連する技術や燃料の供給などに関わる企業は、より短期的な成果が期待できます。
以下に、核融合発電に関連する投資先として、注目すべき企業を紹介します。
核融合発電の炉体や部品の製造に関わる企業
核融合発電の炉体や部品の製造に関わる企業としては、三菱重工業(7011)、IHI(7013)、古河電気工業(5801)、フジクラ(5803)などが挙げられます。
これらの企業は、ITERや国内の核融合研究施設に対して、超伝導磁石や真空容器などの重要な機器を納入しています。
これらの機器は、核融合反応を起こすために必要な高温高圧の環境を作り出すために不可欠です。
核融合発電の燃料となる水素の供給や利用に関わる企業
核融合発電の燃料となる水素の供給や利用に関わる企業としては、INPEX(1605)、東京ガス(9531)、日本ガス化工業(4091)、川重(7012)などが挙げられます。
これらの企業は、水素の生産や輸送、貯蔵、利用などの技術開発や事業展開に力を入れています。
水素は、核融合発電だけでなく、燃料電池や水素エネルギー社会の実現にも欠かせない要素です。
水素の需要は今後ますます高まると予想されます。
核融合発電の研究開発や産業化に向けた投資や協力を行っている企業
核融合発電の研究開発や産業化に向けた投資や協力を行っている企業としては、三井物産(8031)、住友商事(8053)、三菱商事(8058)、三井不動産(8801)などが挙げられます。
これらの企業は、国内外の核融合炉開発企業に対して、出資や部材納入、施設建設などの支援を行っています。
これらの企業は、核融合発電の産業化に先駆けて、その市場の創出や拡大に貢献しています。
まとめ
核融合発電は、未来のエネルギーとして大きな可能性を秘めています。
しかし、その実現にはまだ多くの課題があります。
そのため、核融合発電に直接関わる企業の投資は、長期的な視点が必要です。
一方で、核融合発電に関連する技術や燃料の供給などに関わる企業は、より短期的な成果が期待できます。
本記事では、核融合発電のメリットと課題、そしてその研究開発や産業化に向けた動向と投資先について、わかりやすく解説しました。
核融合発電に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。